恋してキスして抱きしめて
第18章 心からの祈り
『男は外見じゃない。
大事なのはハートだ。
by黒髪の蓮』
………友人の格言が、脳裏に浮かぶ。
いや、違う誤解しないでくれ。
俺の目の前で大量の汗を拭くこの男を、見下しているわけでは決して無い。
だけど
勝手に想像していた、朱莉の旦那のイメージは
俺の中で音を立てて崩れ落ちた。
「……あの……
とりあえず隣り座ってください」
男の呼吸が一向に落ち着かないので、俺は右側のスペースを空ける。
「……今、この奥の病室で眠っているので。
ひとまずここで……」
絞れるくらい濡れたハンカチを、スーツのポケットに入れると
朱莉の旦那は直角90度で俺に頭を下げた。
「失礼しまっす!!」
「…………」
男が横に座った途端に、俺の体はバウンドして一瞬浮いた……
なんてことは流石にねぇけど、まさにそんな感じ。
顔も体も
俺の3倍はあると言っても過言ではない。