恋してキスして抱きしめて
第19章 本当の、サヨナラ
………握り締めた手を、ゆっくりと離すと
朱莉は、もうぐしゃぐしゃになった顔を両手で覆った。
「……ユーリ……」
「………ん?」
「……っ 私
その笑顔を見たかったの……」
「…………!」
「………もう一度
私に笑いかけてくれて……
……本当にありがとう……」
………俺、笑えてたのか。
良かった。
少しでも気を抜いたら、朱莉と同じ状態になりそうだったから。
「……お前も、笑って」
「…………!」
「ただでさえ、俺は危険人物なのに。
そんな号泣してる顔見られたら、一発で仕留められる」
「…………っ」
「あんな剛腕で殴られたら、即死だ」
マジでジョークでもなんでもないから、と付け加えると
朱莉は手を外して、ふっと笑った。
………あの頃と同じ、笑顔。
話足りないことも残っている気もするが、もう充分だ。
元カレがいつまでも居座るわけにはいかねぇ。