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恋してキスして抱きしめて

第20章 ただ、想うだけで

.。.:* side 千夏 *:.。.。.:**:.。.。.:**:.。.。.:*




………あたしが2歳の時に、天国へと旅立ったママは


いろんなことを忘れてしまう病気だった。




何の変哲もない日常生活も


例え相手が家族であっても


本人の意思や願いを無視して、記憶から消えていってしまう、恐ろしい病。




ママの場合は、喜びや悲しみ、痛みといったものも


最後は、ほとんど感じなくなってしまったと


千夏にも真実をちゃんと伝える……と言ったパパが


昔、涙を流しながら教えてくれた。




忘れられてしまう方はもちろん、忘れてしまう本人も苦しくて


それでも、入院してから息を引取るまでの末期でも


お兄ちゃんやあたしが笑うと、嬉しそうに微笑んでたって


パパはそう言って、思い出すように笑ってた。




……だから、あたしは


人の“ 笑顔 ” にはすごい力があって、大切なことなんだと


20年間、ずっとそう想って生きてきたの………


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