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恋してキスして抱きしめて

第4章 朝倉家の天使、ご対面

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………翌日。



『……おかけになった電話番号は、現在使われておりません』

「……そんなワケねーんだけど」

『番号をお確かめになって、もう一度……』

「確かめたわドアホ!!」



自動音声ガイダンスに向けて叫び、ブチッと携帯を切る。


不毛な一人劇の後で、俺はのろのろと玄関まで行き、スニーカーに足を入れた。



「ちくしょ~~
つい2日前、確かにこの番号からかかってきたのに……」



何度かけても通じない携帯を睨んだところで、なんの埒もあかない。


だいたい実の父親ですら、かかってくるまで息子の連絡先を知らないんだからな!


借金返済しろって文句言うなら、逃げないように最初から聞いとけよ!


つーか無職に金を貸すな!



「……初めての有給を、こんな理由で取らされるとは……」



大学の時はあれだけサボッていた俺が、入社以来、無遅刻無欠席の皆勤賞だったのに……


残念過ぎてさっきから独り言が止まらねぇけど、なんせ相手は常務取締役。


………例え友人の父親であっても、俺にとっては神と崇める天空の存在。



「……頑張れ、俺。
平社員に仕事は選べない」



涙がこぼれないように、上を向いて歩くんだ。


マンションのドアを閉めて、俺は溜息をつきながら鍵をかけた。

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