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恋してキスして抱きしめて

第20章 ただ、想うだけで

「……ユーリさんは

今でも、朱莉さんのことが好きなのよ……」


「…………」


「すごく、切ない顔をしてたの。

切なくて、優しい笑顔。

………あたしには、あんな顔を見せてくれない……」




ドアの前に突っ立ったまま、あたしがそう言うと




「……ユーリは、切ない顔なんてしねぇよ」




グラスを手に取って、沈黙していたお兄ちゃんは


そう呟いてから、ふっと笑った。




「あいつは、笑ってる方が似合う」

「…………!」




“ ちーちゃん ”




「…………っ」




………あたしと目が合うと、あたしの名前を呼んで


太陽みたいな、明るい笑顔を魅せてくれる。


お兄ちゃんが言った言葉で


あたしの目の奥に、大好きなユーリさんが浮かんできて


止めたはずの涙が、瞬く間に溢れてきてしまった。

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