恋してキスして抱きしめて
第20章 ただ、想うだけで
「…………」
微笑んだ顔と、優しい声とは対照的に
お兄ちゃんの手は、痛いくらいに強く、あたしの手を握ったまま離さないから
あたしはそのまま、お兄ちゃんの隣りに並んでソファに座った。
“ 愛することと同じくらい、信じることが大事 ”
「………お兄ちゃんは
好きな人とか、いないの?」
ふと、無意識のうちにあたしの口から出た質問に
お兄ちゃんは微笑んだまま、あたしから目を逸らした。
「………いるよ」
「…………!」
「ずっと、いる。
今までも、これからも……その人が振り向くことはないけど」
…………!
切ない瞳の色が、さらに濃くなって
初めて聞くお兄ちゃん自身の恋愛話に、あたしの胸のドキドキが増していく。