恋してキスして抱きしめて
第20章 ただ、想うだけで
「………信じてやれよ、千夏」
「…………!」
あたしの手を握ったまま、お兄ちゃんが真っ直ぐ見つめてくる。
「……愛することと同じくらい
信じることが大事なんだよ」
「…………っ」
「ユーリと千夏、そして朱莉
お前達が今、どんな状況かは分からねぇけど
たまたま見てしまったものだけで妄想して、勝手に決め付けるんじゃなくて
本当に何が正しいかを知るために
相手の目を見て、相手の言葉を聞いて
ちゃんと心を通じ合わせなきゃだめだ」
………さらに強く握られた手に、お兄ちゃんの温もりが伝わってくる。
諭されるような、穏やかな声だから
さっきまでの怒りやイライラが消えていく。
「千夏、お前はユーリによく似てるよ」
「……え……?」
「あいつもハタチの時は、心の声をすぐ口に出しちまってたんだ。
“ ユーリ、心の声が出てるぞ ” って、いつも周りからつっこまれてた。
………俺の予想では
千夏の前では、あいつも素直になってたと思うんだけどな」