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手探りな絶望

第10章 絶望

「周平、柴田さんの家知ってるか?」



「もちろん」



「行くぞ、とりあえず」



「わかった」




冬実が
いなくなった以上
解明の鍵は
柴田さんしかいない


幸い
柴田さんは
冬実の車を
追いかけた俺を
見てはいないはずだ

知らないふりをして
何か聞けないかと
寺田は俺に提案した


それから俺達は
柴田さんに
わざと連絡を入れず
柴田さんの知らない
寺田の車で柴田さんの家に
向かった


「あそこ、曲がったら
もう見えるから」


俺は寺田の後部座席にすわり
指示を出した


「近くに停めて
俺、様子見てくるわ

柴田ってのは
何歳くらいなんだ?」



「う〜ん…

俺たちの親くらいの歳」



「わかった」



アパートの見える場所に
車を停め
寺田だけが柴田さんの部屋の
様子を見に行ったが

寺田は
あっという間に帰ってきた



「ここには
もう居ねぇみたいだ

ドアの前に
不要物が出てた

多分引越してる」




「俺、会社電話してみるわ」



それから
会社に電話をかけ
休んだ謝罪をしてから
仕事の相談があるからと
柴田さんを呼んでもらった


けど


柴田さんは
体調を崩して早退し

さっき電話があって


しばらく
入院することになったから
会社には来れないと
言っていたと説明された




そして
俺たちは


途方に暮れた




「なぁ、周平」




「……ん?」




「柴田と佐々木は

グルじゃねぇか?」







俺も
そう思う



とは

言えなかった





どうしても

言えなかった




でも




もう俺も

そうとしか
考えられなく
なっていた


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