手探りな絶望
第17章 抱擁
「さ、座って?」
千夏のお母さんは
とても優しく
穏やかに
俺に声をかける
でも
俺は
優しくされれば
されるほど
胸が痛んだ
「す、すみませんでしたっ…」
俺は
千夏のお母さんに
ずっとずっと
言えなかった言葉を告げ
深く頭を下げた
「織田くん…
あ、違うのよね
冬実から聞いたわ
今は…藤沢くん…だったわね
頭、あげてちょうだい?」
「でも、ほんとに俺…」
千夏のお母さんは
ベッドから手を伸ばして
俺の腕に触れた
あったかい…手。
その瞬間
俺の目から涙がこぼれた
「みんな…
苦しかったのよね…
藤沢くんも
苦しかったわよね…
ごめんなさいね
私が
こんな風にならなかったら
あの手紙を見つけた時に
あなたに会って
ちゃんと話をしていれば
こんなに長く苦しまなくて
よかったのに…」
手紙…?
俺と千夏の…秘密の手紙のことだろうか…
俺は
少し顔を上げて
千夏のお母さんに目を合わせた
「手紙って…」
「全部話すわね
さ、座って?
藤沢くんも
色々話てくれる?
千夏のこと
聞きたいの
ボーイフレンドだったのよね?
千夏の」
そう言って
千夏のお母さんは
微笑んだ
俺は
その優しい笑顔に
包まれ
ゆっくりと椅子に座った
全部聞いてもらおう
俺は
そう思った