手探りな絶望
第4章 野球
それから
少しして店を出て
店の前で
立ち話をした
日曜日のことを
少し話て
軽い沈黙が続いた
「あ、あの…
藤沢さん
今日はごち…」
ごちそうさまでした
そんなこと
言われたら
もう
帰るしかない
俺はすぐに
言葉を挟んだ
「ちょっと散歩しない?」
「さ、散歩?」
「うん
嫌じゃなかったら
送るよ
佐々木さんちまで。
あ、住んでるとこ知られるの
嫌だったら
その…近くまで」
「え、あ、でも
イヤとか
そんな……」
彼女は
小さな声で
モゴモゴひとりごとのように
つぶやきはじめた
俺は
もう我慢できなくて
ポケットに
手を入れたまま
彼女の唇の近くに
耳を近づけ
「聞こえないよ?
送ってもいい?」
そう
囁いた
そして
目を閉じると
彼女の
小さくて
細い声が
俺の耳に届いた
「お願い…します」
「よし
じゃあ、一杯コーヒー
付き合ってな?
近くに
カフェあるから」
目を開けて
彼女を見ると
彼女は
あまりの
顔の近さに慌て
小さく
小刻みに
うん、うん
と、うなずいてみせた
そして
俺は
そんな彼女を見ながら
ポケットの中の手を
ぎゅーっと
握りしめていた