手探りな絶望
第5章 寺田
試合が始まると
彼女は
野球が好きと言ったわりには
おとなしく
ベンチに座ったまま
声を上げることなく
試合を見つめる
その視線は
優しく
微笑みながら
白球を追う
まるで
懐かしいものでも
見ているような
穏やかな顔
あっ
やべぇ!!
「なにやとんじゃ!
周平!!
女に見とれて
エラーとか
ふられんぞ~~~」
寺田も
なんだか
ハイテンションだ
エラーの後の
チェンジで
打順がまだ
回ってこない俺は
彼女が座るベンチに向かった
タオルで
汗をふきながら
近づき
少し
間をあけて
彼女の隣にすわった