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手探りな絶望

第5章 寺田


寺田に
誘われると

いつも
めんどくせー
とか言ってるけど

ほんとは
うれしいんだ



ほんとは




この
砂ぼこりの臭いが


この
グローブの
感覚が


バットに
ボールが当たる感覚が




たまんないんだよ





「好きなんだ・・」





「え?」





「ほんとはさ



むちゃくちゃ
野球好きなんだ」



何言ってんだよ、俺


俺は
急に恥ずかしくなって
彼女を見ないまま
またグランドへと
駆けだした



恥ずかしいけど
なんだか
気持ちいい



寺田にも
言えなかった
本当のことを

言ってしまった
その心が


晴れ渡った
空のように

どこまでも
どこまでも
解放されたような
気がしていた


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