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ずっと君を愛してる

第8章 どこにも行かないで

つよく、抱きしめていた。
その温もりが、そのやわらかさが、その息遣いが本物なのかどうか確かめたくて。

「静流…もうどこにも行かないで」

それが本心だ。
昔別れた恋人と再会しただけと、ひとことでは片付けられない。ぼくはまるで自分に欠けていた体の一部に会えたような感覚をおぼえた。

このときはっきりわかったんだ。

ぼくは静流と恋に落ちたのではない。溺れたんだ。

ぼくの休暇が終わればまた今までと同じ生活がある。ぼくにはぼくの、静流には静流のそれぞれの生活が。

「…私は…きっと色んなところに行くよ。誠人が教えてくれたカメラひとつで、自由に飛ぶことを知ったの…誠人は私の大切な人…世界中でいちばん。だからどこにいても私は誠人のものだよ」
「うん…」

ぼくはただ静流に会えたことで、これからずっと一緒にいられると思っていた。漠然と。そんなわけないのにな。
…せめてニューヨークにいる間だけ、二人でいる時間を大切にしよう。
もう学生時代のようなぼくたちじゃ、ないんだろうな。

「静流!待ってよ。今行くから!」

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