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ずっと君を愛してる

第9章 幸せな時間

「なんで?なんでそんなこと聞くの?」
「いや・・・何となく」
「誠人だけだよ。こんなことするの。」
「本当かな。だって静流、かわいくなったし」

言った後で、しまったと思った。これじゃまるで嫉妬深い男だ。でも静流はそうはとらなかったようだ。

「かわいくなったと思ってるのは誠人だけだよ。ほとんどの人が私が急激に成長しちゃったこと、知らないんだよ?」

ふふっ、と笑って静流はぼくの唇をその細い指でなぞった。
静流にとって、一緒にいるとかいないとか、愛してるとか愛してないとか、誰のものだとか、そういうのはきっとどうだっていいんだろうな。もっと単純な何か・・・自分がいて、他人がいて、お互い生きていて。
静流は、猫みたいにぼくの胸に顔を寄せてきた。今は、これでいい。

「また、会えなくなっちゃうね。でも私は大丈夫。誠人も写真を撮ってるってわかったから。カメラで繋がってるね」
「そうだね。」

そう言うと静流は安心したように眠りに落ちていった。

ぼくはそっとベッドを出て、静流の本棚を見た。
写真集があって、漫画があって、CDが一緒に並べられていて、日本の文庫本もいくつか。ぼくも読んだことのあるものがほとんど。静流が勉強したフランス文学もの、ガイドブック、地図。
その中に混じって、鍵のついた分厚い・・・日記帳?、白い革の表紙でシンプルだけど、そんなに古くはない。静流が日記をつけていたことに驚く。
鍵はかかっておらず、簡単に開いた。人の日記を読むなんて悪趣味はぼくにはなかったけれど、表紙にこんなことが書かれていたら、読まずにはいられないだろう。

『誠人へ』

…ぼく宛て?

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