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ずっと君を愛してる

第10章 日記

それは、1998年の春から始まっていた。大学に入学した年、静流に出会った頃だ。
例えば、一番始めの日記にはこんなことが書かれている。

『1998年4月17日
絶対に渡れない横断歩道で、絶対に好きになりそうな人に出会った。それは君のことだよ。名前も連絡先も聞かなかった。でもまた会えるよね。君のカメラのフィルムに、私は記録されたからね。』

確かに、ぼくは手をまっすぐに伸ばして懸命に自分の意思を表明している静流が滑稽でかわいくて、思わずシャッターを切った。でも…ぼくは、そんな風には思わなかった。まさか、こんなに大切な女の子になるなんて。

別の日。

『1998年8月10日
夏休み、誠人は何をしているの?私はひたすら写真を撮っています。後期が始まったら誠人に見せてあげるね。明日、誠人の家に行ってみよう。びっくりするかな』

この頃は、まだぼくの部屋に来たことはなかったはず…
次のページをめくると答えがわかった。

『1998年8月11日
誠人は留守だった。どこに行ったの?バイトかな、実家かな?誠人に会いたい。私のことなんて、思いだしもしないかな?』

この日は、関口やみゆきたちと泊まりでキャンプに行ってたんだ。
静流、うちに来たんだな。でもそのあともそんなことは一言も言わなかった。

『1999年6月4日
好きな人が好きな人を好きになりたかった。そう言うと誠人はびっくりしてたね。私にとっては当たり前のことなのに。みゆきはいい子。誠人が好きになるのはすごくわかる。私もみゆきのことが大好きだもん。ねぇ誠人、頑張れ。』

静流の気持ちは知っていたし、ぼくがあの頃みゆきを思っていた事実を静流が知っていたことも覚えている。今思えばすごく複雑ですごくおかしい。

『2001年9月25日
誠人、ありがとう。すごく素敵なキスをありがとう。もう十分です。』

この日を最後に静流はぼくの家を出ていった。ここからは、ぼくの知らない静流が綴られている…知りたいような、知りたくないような複雑な気分だ。
だけどやはり知りたい。ページをめくる。日付はしばらく空いている。

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