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ずっと君を愛してる

第3章 再び

東京からたった半日で、ぼくはニューヨークに降り立った。静流のいる、ニューヨーク。

静流は突然ぼくの前から姿を消した理由を手紙でこう書いた。

『…あのキスのあと突然恥ずかしくなったの。キスに、じゃないよ。自分が口ばっかりで全然大人になれてないことに。』だから、『誠人に教えてもらったカメラを頼りに最初はフランスに来たの。』

手紙は、続く。

『偶然ひとりの女性に出会い、一緒に写真を撮るうちに彼女のアシスタントに誘われ』、『世界中を撮影してたら、落ち着いたのがいま。』だったらしい。
それが有名フォトグラファー、クリスティー・チャンで彼女のオフィスに就職したという。

…知ってる。そういえば写真のテイストが静流と似ている。

空港から乗ったバスはブルックリン橋にさしかかった。
小さな静流がこんな大きな街に暮らしているなんて。ちょっと想像もできない。
グランドセントラル駅に着き、そこから歩いてギャラリーに向かう。
ひとの多さに怯みそうになる。

同封されていたのは、個展の案内。

『fluke Shizuru Satonaka』

fluke、思わぬ幸運…静流にとっての、幸運。
早く静流の写真を見たい。会わなかった2年をどんなふうに過ごしたのか、きっと写真を見れば話すよりも早いから。

個展最終日のクリスマスイブ、終日ギャラリーにいるから来て、と彼女にしてはわがままなお願いのためにぼくは、鬼のように仕事をこなし今日から六日間の休暇をもらったのだ。

その場所は、賑やかな通りから外れたところにあった。
冷たい風が吹いて枯れ葉が吹き溜まりになっている。
レンガ色の高い建物の1階。
このドアを開ければ静流に会えるというのに、ぼくはもう少しこのドキドキを味わっていたいような気がして…。

きみは、どんな女性に成長したんだろう?

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