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ずっと君を愛してる

第4章 終わってなんかいない

その時背後から声をかけられた。
「あなたは、マコト?」
ゆっくりとした、英語。そこには東洋人の女性が立っていた。
「クリスティーです。シズルのボス。」
「あぁ…はじめまして、マコト・セガワです」
「シズルは今ちょっと出ているの。あなたが今日来るはずだからって、頼まれたのよ。すぐに帰ってくるから、ゆっくり見て行ってね。」

彼女がクリスティー・チャンか…想像していたより気さくな感じだ。

ぼくは再びゆっくり歩きながら作品を見た。
最後のテーマは、こう書かれていた。

『memory』

最初は、ぼくが撮った静流だった。初めて出会った日、国道で横断歩道を渡ろうとまっすぐに手を伸ばしている静流の、横顔。キャプションには『by Makoto Segawa』。

その次からは驚きの連続。

あの森の風景。
大学まで歩いた道。
シャッターを切る、ぼく。
池で石を投げる、ぼく。
二人で料理したキッチンに立つ、ぼく。
カメラの手入れをする、ぼく。
本を読みながら欠伸する、ぼく。

こんなに無防備な姿をいつ撮られたんだろう…でもあれだけいつも一緒にいたんだからシャッターチャンスはいくらでもあった。なのに、覚えていない。
…静流はこんなにもぼくに関心を向けてくれていた。

そしてひっそりと、あのキスの写真が置かれていた。

『It was the only kiss,the love I have ever known...』

生涯ただ一度のキス、ただ一度の恋。
…そんな悲しいキャプション、どうしてつけたんだろう。ここから始まるはずだったじゃないか。
静流は、もうあの恋を終わらせてしまったのだろうか?

早く会って静流に聞きたいことがたくさんある。

そのとき、気配を感じて顔を上げた。

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