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ずっと君を愛してる

第5章 再会

もう、以前のように視線を合わす必要はなかった。
顔を向けると、そこにはぼくより背が少し低いだけの静流がいた。

「…久しぶりだね」
「うん…」

それを言うのが精一杯だった。ぼくは、憧れていた年上の女性に会った少年のように緊張し、言葉を失っていた。

成長というにはあまりにも、静流はきれいになりすぎた。

バサバサのおかっぱ頭だった髪は伸び、遠視用のメガネは当然外し、その大きな瞳はただ、ぼくを見つめていた。
胸は服の上からでも十分確認できるし、(以前はかなり困難なことだった)ジーンズに包まれた丸いお尻はどうみても24歳の女性だった。
声を聴かなければ目の前にいるのが静流だとは気づかなかったかも知れない。

「静流…」
「来てくれてありがとう。誠人」
「いい写真ばっかりで、びっくりした」
「…うん」
「頑張ったんだね。えらいよ、静流」

ぼくがそう言うと、静流の二つの目からは、みるみる涙があふれた。
わかってる。自惚れてもいいかな。きっと静流は、ぼくに褒めてほしくて頑張ってきたんだろ?二人で過ごした時間を支えにここまで来たんだろ?
わかるよ。ぼくだって同じだったから。

「いつまでニューヨークにいられる?」

まだ涙目のまま、静流は聞いた。

「28日の便で帰るよ」
「そんなに時間があるんだ?!うれしい!」
「久しぶりに会えるから、無理言って休みをもらったんだ」
「じゃあ…とりあえず帰ろっか。誠人疲れてるよね」
「…もう少しみていい?」
「うん。じゃあ私、準備してくるね」

駆けてゆく足音まで違っていた。ぼくは、落ち着いて作品を見るどころではなかった。
ふと、窓の外からさっき歩いて来た通りを見る。寒くて凍えそうなのに、みんな楽しそうだ。
そうか、クリスマス。時差を超えてやってきたぼくは、誰よりも長くクリスマスの時間を過ごしていたのに。
どれくらい外を眺めていただろう。
街はきらきらとイルミネーションが輝き始めた。
今のぼくだから、こんなただの電球でさえ美しいと思える。

「帰ろっか」

コートに身を包んだ静流は手を差し出した。
その手をしっかり握って、ぼくたちはあのきらきらの電球のもと歩き出す。

…もう離さないから。

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