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アクマにアソコを貸しました

第4章 恋ができないじゃないですか

会社のフロアに着くギリギリまで存在を薄くする術で気付かれ難くしている、そう言っていた。

モテるのが煩わしいなんて、大変でございますわね!

総務で一番キレイな女性が群がる女性社員を蹴散らすようにケィシに近づいた。

「おはよう京紫(けいし)頼まれてた資料、作っておいたわよ」

テラテラと艶やかな唇をニコリと緩め、当然のようにケィシの言葉を待っている。

「あぁ、ありがとう。早くて見やすいから助かるよ」

手渡された資料をパラパラと確認し、僅かに持ち上げて目元で笑って礼を言った。

プッ!皆さん、悪魔が良い人ぶってますよー!

なんて心の中で茶化しつつも、正体不明のイライラをどうすればいいかわからない。


「おーいカグ?神楽坂ー?」

目の前でひらひらと手を振られて、コーヒーを持った同期の男の人に呼ばれていたと漸く気が付いた。

「ほい、コーヒー。今朝は特別だぞ、深く感謝しろよ。借りは倍にして返してくれよな」

「ありがとうございます〜
でも倍は高いなー単なるついででしょ」


笑い合った瞬間、どこからか感じた気に背筋が震えた。
ぶるるるる…

恐々とフロアを見回すと、誰もこっちなんか見てない。

女の子に囲まれているケィシのオーラがどす黒いのは、きっと気のせいだ。

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