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アクマにアソコを貸しました

第5章 近づいてるんじゃないですか

こんな小さな珠によくこれだけの光や風が入っていたと感心する。光が風とともに渦を巻き、吹き上がり、暴れに暴れて徐々に貌(かたち)を成していく。

サラサラの黒髪、スラリとした肢体、筋肉の付き方はケィシよりも少ないか。それでも細身の体は引き締まっていて美しい。


髪をかきあげると共に伏せていた顔を上げたら、橙色の瞳と目が合った。


彼はニコリと私に微笑んで、真っ直ぐにケィシを見た。

「ただいま京紫」

「あぁ。…おかえり真赭」

「こんな無理しなくてもよかったのに。
京紫、ありがとう。本当に戻れるとは思ってなかった…」

フラりと前に出たケィシが引き寄せられるようにマソォへ近づいて行った。

よろけるようにマソォにハグすると小さな声で繰り返す。

「良かった…本当にすまなかった。お前が俺の身代わりで死んだら…そう考えるだけで居ても立ってもいられなかった」

「その代わり京紫はこんなハイリスクなやり方で俺を助けてくれたんだから、おあいこだろ」


良かった。ようやくケィシの悲願が達成されたんだ。二人を見てると胸が震えて熱くなる。
だけど、目的を達したケィシは自分の世界に帰るのだろうか。


別れが近づいた――…

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