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G線上のアリア

第4章 夢は…

朔夜は一歩前を歩く夢叶を、ただ見ているのだが―――夢叶は説明に懸命で視線の先を追っては来ない。朔夜は説明を受けていても、どっか聞き流しに光景を見送っていた。

「退屈?」

心配そうに眉間をしかめて呟く夢叶に、朔夜はゆるく首を左右に振ることで否定する。
「でも聞いてないでしょう?」
「聞いているけど…お昼、どこに行ってたの?」
「へ?…」
誰も居ない屋上へ続く階段に二人は来ていた。隙間から入ってくる風に、一瞬だけ身を震わせた夢叶の出口を塞ぐ朔夜の両腕。
「どこへ行ったの?俺を置いて……」
据えられた瞳と言葉に、夢叶の四肢は一気に固まった。それも急速に―――。

「ね?どうして?」

言葉は優しい分、朔夜の瞳が冷たく夢叶を見据えていた。思いのほか強い感情に触れると、心が竦んでしまう。

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