G線上のアリア
第4章 夢は…
「どうして……って…」
思わず顔を反らしてしまう夢叶の、両頬を捉えた指先が頬を優しく撫でる。言葉が出る前に朔夜の両眼がまっすぐに夢叶を射る。―――毅さに、言葉は止まった。
「どうしてだって?………知りたいからに決まっているだろ?」
戻ってきた夢叶は楽しそうに笑ったのだ。いつも朔夜にしか見せない笑みで、それが何故か腹がたったのだ。理由なら、朔夜が欲しいとさえ思うのに。その答えは霞んでいて、まだはっきりと見えないのだ。
「……知りたいならあれだけど、図書館で弁当を食べて万葉集を借りたんだ。人の想いに触れる本でね…朔夜も読んでみるかい?」
それだけで其処まで嬉しそうに話す夢叶を、朔夜はそっと視線を反らした。見えかけた一瞬が解かれてしまった感覚に、朔夜はとりあえず熱心に語る夢叶を見た。
「凄く昔の綺麗な言葉で、切なさを歌ったり…とってもいいなーって思ったんだ」
「そっか…夢叶らしいな」
指先が夢叶の髪に触れる。刹那に浮かんだ言葉があったが、朔夜は指先を解き背中を向けた。階段を降りだした朔夜の後を夢叶が続く。
「僕さ…実は絵本作家になりたいんだ」
「絵本作家?」
そう、と頷く夢叶は確かに美術部に入っているとは聞いた。淡い色彩で描かれるスケッチブックも見たことがある。
「目標?…」
「うん、なれるなれないって言うのはずっと後の話だし……海外の絵本を翻訳する仕事でもいい。そういう何かに携わる仕事を将来選びたいな…って」
男の夢にしては、ちょっと変かも…と控えめに笑う夢叶の頭を抱きかかえた。
「いいじゃん!…応援するぞ…」
ありがとう、と小さくはにかんで笑う夢叶を見ている朔夜の心で何かが淡く灯る感触がした。だがそれを何かと知る前に、夢叶が歩き出してしまい。言葉はあっさりと夕焼けに融けてしまう。
思わず顔を反らしてしまう夢叶の、両頬を捉えた指先が頬を優しく撫でる。言葉が出る前に朔夜の両眼がまっすぐに夢叶を射る。―――毅さに、言葉は止まった。
「どうしてだって?………知りたいからに決まっているだろ?」
戻ってきた夢叶は楽しそうに笑ったのだ。いつも朔夜にしか見せない笑みで、それが何故か腹がたったのだ。理由なら、朔夜が欲しいとさえ思うのに。その答えは霞んでいて、まだはっきりと見えないのだ。
「……知りたいならあれだけど、図書館で弁当を食べて万葉集を借りたんだ。人の想いに触れる本でね…朔夜も読んでみるかい?」
それだけで其処まで嬉しそうに話す夢叶を、朔夜はそっと視線を反らした。見えかけた一瞬が解かれてしまった感覚に、朔夜はとりあえず熱心に語る夢叶を見た。
「凄く昔の綺麗な言葉で、切なさを歌ったり…とってもいいなーって思ったんだ」
「そっか…夢叶らしいな」
指先が夢叶の髪に触れる。刹那に浮かんだ言葉があったが、朔夜は指先を解き背中を向けた。階段を降りだした朔夜の後を夢叶が続く。
「僕さ…実は絵本作家になりたいんだ」
「絵本作家?」
そう、と頷く夢叶は確かに美術部に入っているとは聞いた。淡い色彩で描かれるスケッチブックも見たことがある。
「目標?…」
「うん、なれるなれないって言うのはずっと後の話だし……海外の絵本を翻訳する仕事でもいい。そういう何かに携わる仕事を将来選びたいな…って」
男の夢にしては、ちょっと変かも…と控えめに笑う夢叶の頭を抱きかかえた。
「いいじゃん!…応援するぞ…」
ありがとう、と小さくはにかんで笑う夢叶を見ている朔夜の心で何かが淡く灯る感触がした。だがそれを何かと知る前に、夢叶が歩き出してしまい。言葉はあっさりと夕焼けに融けてしまう。