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G線上のアリア

第5章 懐かしい思い出

三人は時々振り返りながら喋る青葉の後をついて、食堂へとやってきた。
「何が飲みたい?」
振り返って聞く青葉に、とりあえず自分が好きなお茶を指差した。
「おし。じゃ、今日はおまけだ……そっちの兄ちゃんは?」
振り返り小さく笑いかける青葉に、眉間を顰めて溜息をつくと炭酸飲料を指差した。
「おっけー」
自分の分を買うと夢叶の前に座る。隣には朔夜が居て、放課後ということもあり、広い食堂にはまばらな人数が、部活後の食事をしたりしていた。

「俺には八代朔夜って名前がある」
「そ、俺は出水青葉…」

二人の視線がさりげなく夢叶に行くと、少しだけ困った視線で二人を見て続けた。
「一条夢叶」
「夢叶、って呼んでいい?」
「?なんで??」
ストレートに聞いてくる青葉に、不信を示すかに眉間を寄せた夢叶。その間を指で青葉が突付いた。
「委員長に興味があるから………後、ずっと友達になりたいと思っていたけどさ。必要以上に誰にも話しかけないクールビューティーでミステリアスってとこに興味がある―――それと…」
「それと?」
思わず首を傾げて聞く夢叶に、青葉が苦笑した。
「続きは今日は秘密!」
きっぱりというとごくごくっと、喉を鳴らしながら一気に飲みだし、口からペットボトルを離すと口元を袖で拭う。
「秘密ねぇ…」
「今はね…」
くすっと笑う青葉に、意味が分からない夢叶はただ瞬きを繰り返す。

「じゃ、バイトあっかから今日は此処で!」

にやっと笑うと夢叶の耳元に唇を寄せる。
「ヒント1写真。ヒント2…ゆうちゃん………だよ」
きょっとんとしている夢叶の肩を叩いて、それじゃ!と片手を上げると自分の鞄を持って走っていく姿を、夢叶はぼんやりと見送った。
「………夢叶?」
ぼんやりとしたまま、扉をいつまでも見ている夢叶に朔夜は溜息をついて、ペットボトルを煽る。
ヒントから答えを求めて、ずっと眉間を顰めていた夢叶の肩を朔夜が叩いた。

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