G線上のアリア
第5章 懐かしい思い出
「そうじゃないっ!」
焦れた。その言葉のまま、朔夜は激情に操られ夢叶の細い肩を強く掴んで引き寄せる。引力は何時だって引かれるがままに、逆らうことは難しい。とっさだったこともあった。
「………っ…」
不意に訪れた一拍は、思う以上に夢叶を朔夜を捕らえたらしい。二人は互いの意図を探り合う眼差しで、静寂というよりも沈寂に落ちた空気の中で微かな身動きさえ出来い。
「夢叶が好きなんだ………」
脱力しながら想いを吐き出す朔夜に、硬直したまま大きく息を飲み込んだ夢叶。反応は予想が出来ていたのか、朔夜の表情に冷笑が浮かんでいた。
「信じられないだろう?女が駄目だからって、男がいいなんてなっ!!」
吐き捨てた言葉を憤りが襲う。自分がされて嫌だったことを、無理矢理に奪う真似はしたくない。感情が粟立った今、この場所にいることは出来ない。朔夜は荒れる感情を拳に閉じ込めて立ち上がった。
「まってっ!!」
出て行こうとした腕を、夢叶は両手で掴んだ。
今、離してしまっては誤解をさせたまま。たった一人で放り出してしまう。思うよりも先に伸びた腕が、朔夜の行動を止めた。
「まって…、いつ?僕を??」
次第に先ほどの空白に、重ねられた淡い感触が脳裏で思い出されて震えた。
震えは小刻みであったが、朔夜を思いとどまらせるには良かったようだ。踏み出しかけた足を戻し、まっすぐに見上げてきた瞳に魅縛されてしまう。
「座ってほしい…」
懇願するように俯いた夢叶の前に、もう一度だけ朔夜は座ってみた。だがそれは去らないという意味ではないのだと教える膝が半分立ったままで。
「僕は膝を突き合わせて、話がしたいんだ…簡単な問題じゃないことぐらい…朔夜だって分かっているだろう?」
顔を上げた夢叶は普段見せる小動物のか弱さはなく、凛とした澄んだ湖面の冷涼さを見せる。朔夜は片方の膝も下ろし、今度こそ正面から二人は互いの瞳を捕らえあった。
焦れた。その言葉のまま、朔夜は激情に操られ夢叶の細い肩を強く掴んで引き寄せる。引力は何時だって引かれるがままに、逆らうことは難しい。とっさだったこともあった。
「………っ…」
不意に訪れた一拍は、思う以上に夢叶を朔夜を捕らえたらしい。二人は互いの意図を探り合う眼差しで、静寂というよりも沈寂に落ちた空気の中で微かな身動きさえ出来い。
「夢叶が好きなんだ………」
脱力しながら想いを吐き出す朔夜に、硬直したまま大きく息を飲み込んだ夢叶。反応は予想が出来ていたのか、朔夜の表情に冷笑が浮かんでいた。
「信じられないだろう?女が駄目だからって、男がいいなんてなっ!!」
吐き捨てた言葉を憤りが襲う。自分がされて嫌だったことを、無理矢理に奪う真似はしたくない。感情が粟立った今、この場所にいることは出来ない。朔夜は荒れる感情を拳に閉じ込めて立ち上がった。
「まってっ!!」
出て行こうとした腕を、夢叶は両手で掴んだ。
今、離してしまっては誤解をさせたまま。たった一人で放り出してしまう。思うよりも先に伸びた腕が、朔夜の行動を止めた。
「まって…、いつ?僕を??」
次第に先ほどの空白に、重ねられた淡い感触が脳裏で思い出されて震えた。
震えは小刻みであったが、朔夜を思いとどまらせるには良かったようだ。踏み出しかけた足を戻し、まっすぐに見上げてきた瞳に魅縛されてしまう。
「座ってほしい…」
懇願するように俯いた夢叶の前に、もう一度だけ朔夜は座ってみた。だがそれは去らないという意味ではないのだと教える膝が半分立ったままで。
「僕は膝を突き合わせて、話がしたいんだ…簡単な問題じゃないことぐらい…朔夜だって分かっているだろう?」
顔を上げた夢叶は普段見せる小動物のか弱さはなく、凛とした澄んだ湖面の冷涼さを見せる。朔夜は片方の膝も下ろし、今度こそ正面から二人は互いの瞳を捕らえあった。