G線上のアリア
第8章 ひとりじゃない
思い出すことが―――出来た。
腕の中で緊張を解いた夢叶の寝顔を眺めている自分が、初めて深く満たされていることに朔夜は気がついていた。
抱きしめる腕を強くして、肩口に額を押し当てると誰よりも安堵している自分が、細い肢体にしがみついていた。
無理と強制に零れた涙の跡を指先で拭い、寝息を立てている吐息に触れる。それだけで満たる充足感はどう表現すればいいかと、喜びと幸せを前に朔夜は頬を笑みの形に緩めた。
「夢叶だけでいい………」
誓う言葉に似た甘さを伸ばした声。胸に空いていた穴が確かに塞がっていく。これは―――至福の名の下に。
触れ合える肌の感触を静香の帰ってきた呼び鈴の音が響くまで続けていた。
「朔夜くん、夢叶くんは?」
「寝ちゃいました」
苦笑というか彼の母親を前に緊張している身体。夢叶と身を重ねてしまった罪悪感と、母の香りに似た女性を騙し続けなければならない痛み。棘だらけの感情を両手に抱きしめても夢叶と恋を重ねて生きたい。
「そう…残念ね…ケーキ買ってきたのにな」
左手にぶら下がった小さな箱を持ち上げて、静香は本当に残念そうに呟いた。
「……起こしましょうか?」
「ん、そうして。一回起こして起きなかったら、夢叶くんは朝まで寝ているから」
楽しそうに笑っていう静香に、朔夜は小さな笑みを浮かべて頷く。そのまま背を向けて部屋へ向かうと、夢叶の寝息は変わらず続いていた。
腕の中で緊張を解いた夢叶の寝顔を眺めている自分が、初めて深く満たされていることに朔夜は気がついていた。
抱きしめる腕を強くして、肩口に額を押し当てると誰よりも安堵している自分が、細い肢体にしがみついていた。
無理と強制に零れた涙の跡を指先で拭い、寝息を立てている吐息に触れる。それだけで満たる充足感はどう表現すればいいかと、喜びと幸せを前に朔夜は頬を笑みの形に緩めた。
「夢叶だけでいい………」
誓う言葉に似た甘さを伸ばした声。胸に空いていた穴が確かに塞がっていく。これは―――至福の名の下に。
触れ合える肌の感触を静香の帰ってきた呼び鈴の音が響くまで続けていた。
「朔夜くん、夢叶くんは?」
「寝ちゃいました」
苦笑というか彼の母親を前に緊張している身体。夢叶と身を重ねてしまった罪悪感と、母の香りに似た女性を騙し続けなければならない痛み。棘だらけの感情を両手に抱きしめても夢叶と恋を重ねて生きたい。
「そう…残念ね…ケーキ買ってきたのにな」
左手にぶら下がった小さな箱を持ち上げて、静香は本当に残念そうに呟いた。
「……起こしましょうか?」
「ん、そうして。一回起こして起きなかったら、夢叶くんは朝まで寝ているから」
楽しそうに笑っていう静香に、朔夜は小さな笑みを浮かべて頷く。そのまま背を向けて部屋へ向かうと、夢叶の寝息は変わらず続いていた。