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優しいキスをして

第1章 出来心

「あ、一樹?ごめん、今日先約があってさー。んーまた今度ね」

あたしは須藤美優。高卒で美容室に入社して、今年で3年目だ。

「もしもし、まさー?今日会議で遅くなるんだー、ごめんね」

半年前にカットデビューし、日々修業も兼ねて毎日夕方になると各地を転々としている。

「あ、りくと?今日ごめん!どうしてもはずせない用事があるの、今度はこっちから誘うから」

夕方だけにあらず、忙しいお店に呼ばれればヘルプで動き回る転勤族。あたしが勤める美容室は県内で展開している美容室チェーンで夕方にでかけることが多いのはパートの技術者が帰ったあとの穴埋めだ。

「もしもし、裕貴?今日友達と会う約束しててさー。うん、またメールするー」

店舗を渡り歩くあたしとしては駐車場からお店までのこの短い距離でも要件を済ますのに大事な時間だ。最近では極々日常茶飯事なのだ。

「あ、俊介?今日超会いたいけどちょっとヤボ用があってね。うん!ごめん、またねー」

あたしにとっては一日ずっと同じお店にいるよりはこうやって車で移動しては違うお店に出入りするのも悪くないし、楽しかった。

あたしは駐車場から歩きながら今日メールが来たセフレたちに今夜の誘いの断り電話をしていた。

今日も例によって夕方から移動。今から行く8番店は少し駐車場と離れてるからこういったプライベートの用事を済ますにはちょうどいい時間。
あたしは実はセフレが何人かいるわけで、正直夜はかなり荒れた性生活を送っている。
1年近く前にすごく好きだった人に突然理由なしに別れを告げられ、苦悩の末の乱行。
しかも、あたし実は最近まで処女で、それが理由だったのかなあとも思った。
で、自棄になって今も現在進行形って感じ。
でも、あたしだって笑っちゃうぐらい純で、その時に好きだった人がいる。入社してすぐに一目惚れ。2年近く片想いもしていた。

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