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優しいキスをして

第6章 秘密の恋人たち

俺は美優が喋り始めたので少し体を離し、肩を抱く程度にした。
「じゃあ休みあったらどこ行きたい?」
「んー、ディズニーとか……富士急とか……遊園地とか……?」
「美優って意外と子供……っ」
俺は思わずフッと吹き出してしまった。
すると美優は俺に頬を膨らませて怒ったように見せたが、やがて俯いて言った。
「だって……日帰りだとそれぐらいしか思い浮かばないし……。泊まりとかだと温泉とか、どっか旅行したいけど、なかなか現実味ないから」
……まあ、確かにな。
美優の言うことは最もだ。うちの会社はよほどのことがないと連休なんて取れないし、でかけた次の日にゆっくりすることなんて絶対ままならない。
「んー……俺は美優とならどこでもいい。二人でゆっくりしたい」
俺が見つめて言うと美優は頬を染めて笑った。
「……あたしも//」
……こんなふとした瞬間に、……可愛いなぁ。……といまだに思ってしまう俺。どんだけ好きなんだろ//
ずっと、俺だけに笑いかけてほしい。
そう思うと、確認したい衝動に駆られた。
「美優……俺のこと、好き?」
美優は一瞬、え?という表情をした後いたずらっぽく微笑んだ。
「珍しいなー。ともくんが聞くなんて」
…………//。
俺は照れ隠しで美優をまた抱き締めた。
「……聞きたいのっ。言って?」
少しの間の後、美優は俺の胸に頬を付けたまま言った。
「……大好き。すっごい好き。あたし、このままずっと……一緒にいたい//」
「……っ。俺も」
……ヤバイ。
美優が俺のことを好きなのはわかってる。わかってるのにやっぱり言われると嬉しくて、もっと一緒に居たい。このまま帰したくない……。そう思ってしまう。
……そうだ。
俺は前から聞きたかったことと、考えてたことを思い出した。
「……ねえ、そう言えば、なんで家に早く帰らないの?お前、いつも親が寝た頃に帰りたいって言うけど、親とあんまり上手くいってないの?」
美優は俺の胸を軽く押すと、俯いて言った。
「親と上手くいってないってゆーか、お父さんに会いたくないだけ。うちのお父さん、変わってるし、もう社会人だってゆーのにいまだに色々とうるさいからさ」
……お父さんに会いたくないのか。女の子だから帰りが遅いとか、なんか言われるんだろうな。
「じゃあ、家出ちゃえば?」
美優は曇った表情のまま、無理に笑った気がした。

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