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優しいキスをして

第6章 秘密の恋人たち

美優の車を発見すると俺はすぐ隣に車を停めて美優に駆け寄った。
「ごめんっ、おまたせ」
「お疲れ」
美優は自分の車のボンネットに座って、満面の笑顔で迎えてくれた。
「結構待ったろ?ごめんな。回り道したらすっげぇ道混んでてさ。超焦った」
俺は到着して美優の顔を見るとホッとした。
美優は俺が遅れても全く嫌そうな顔ひとつせず笑って言った。
「車飛ばして来たんじゃない?待たせるより待つ方があたしはいいから、そんな急いで来なくていいんだよ?」
美優は自分のことより人の心配ばかりする。
美優は、……付き合ってみてわかったことがある。
見た目は可愛いくて、色っぽくて軽そうなのに、意外と献身的で尽くすタイプだ。たまーに言う我が儘は俺と一緒に居たいがために言うだけで、俺は嬉しかった。
「……ごめんな?まさかずっと外で待っていたわけじゃないと思うけど、……寒かったろ?」
そう言って俺は美優のすぐ隣に座ると自然と美優を抱き締めた。触れた体は冷たかった。
……ずっと、待ってたのか?
美優の体は冷えきっていて、抱き締めていると冷たさが伝わってきた。
「……あったかい//」
美優は嬉しそうな声で呟いた。
……こんな冷えきってるくせに。文句のひとつぐらい言えってっ。
俺は遅れてきた自分を責めるしかなかった。
美優は俺に抱き締められてよほど暖かいのか、目を閉じていた。
黙って俺の胸に身を任せている美優の顔を盗み見て、愛しさが高まる。
……はあ。もっと普通に会えればなあ。もっと一緒にいられるのに。
思わず本音がこぼれた。
「こんなとこでこそこそ会うことしかできないなんてな……。休みも合わせらんないし」
「……しょうがないよ。バレるよりマシだもん。今度休み合うときあったらどっか遊び行きたいね!」
言うと美優は笑って俺を見上げた。
俺もつられて微笑んだ。
「そうだな。まともにデートらしいデートなんてしてないしね」
「うん。あたしさ、意外とデートってしたことないんだよね」
……そうなんだ?確かに意外だな。

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