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顧みすれば

第10章 急接近

「何不自由なく育って思い通りにならないことなんてないって思ってた?」

横目でニヤリと私を見る

私は俯きがちに

「まぁ、そんなところです」

常務はふふふと笑う

「正直だね、佐々木さん。
 でも、きっとみんなそう思っているんだと思うよ。

 本当はとても窮屈なのにね。

 恋愛はともかく結婚だって決められてるよ。だから自由なうちに遊びたいと思っちゃうんだよね」

常務の眼差しは寂しそうだ

「じゃあ、私も遊びの延長ですか?」

「ごめん、これは失礼な事を言ってしまったね。
 そうじゃない。自分が好きな人と恋愛したいっていうのは普通の感情だろう?」

「そうですが、結婚が決まった方がいるならこの恋愛は期限付きになりますよね」

常務がチラリと私を見る

「でも、本気になれば親だって説得するさ。

まだそんな女に出会えてないだけのことだよ」


何も言えなくなってしまった。

重い沈黙が続く車内

車は高速を降りて丘の方へと昇っていく

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