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顧みすれば

第11章 盛夏

「ところでさぁ 

 山下常務とはどうなってんの?」

美保先輩が私に肘をつく

「何もないですよ」

「またぁ、しらばっくれちゃって」

「何がですか?」

美保先輩が私の耳元に口を寄せる


「山下常務とキスしてたよね」


ブハッッ
飲んでいたチューハイを吹き出した

思わず美保先輩を見る

美保先輩はさも楽しそうにあらぬ方を見て鼻唄まで歌ってる

周りがざわつく

「なになに?」

「佐々木さんどうしたの?」


あわてて吹き出した液体をおしぼりで拭く

「ごめんね 何でもないの」

みんなに愛想笑いを振り撒く


美保先輩に小声で話しかける

「なんでそれ‥‥」

「知ってるかって?

 見ちゃったんだもぉーん♪

 私もあの日元町にいたんだ。

 まさか、とは思ったけど

 あんな目立つ車の前でやってたら目につくわよ♪」


酔いも覚める...

「いいじゃない。御曹司♪
 羨ましいなぁ~♪ 亜美ちゃん」

「ちょっ ちょっと

 美保先輩、声大きい」

さっきからみんなが何事かと私たちに注目している

「佐々木、なんの話?」

松田くんまで入ってくる

「あ、何でもないの。気にしないで」

美保先輩を見れば楽しそうにビールを飲み続けている。

まさか、美保先輩に見られていたとは...

「美保先輩、その話は」

さらに小声で話しかける

「わかってるって♪
 その代わりこのあと付き合いなさいよ。

 もちろん亜美ちゃんの奢りでね♪」

「うっそぉーん」

ガクリと項垂れるわたしを見て美保先輩は楽しそうにお酒を重ねていく。

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