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顧みすれば

第12章 砂漠の檻

「ケホッ ゲホッ」

 砂を吸い込んで目を覚ました。

 私はゆっくりと辺りを確かめた。

 高い天井近くの小窓から灼熱の陽射しが射し込んでいる。窓はそれひとつ。
 扉の向こうからはアラビア語が聞こえてくる。逃げ道は無さそうだ。
 私は石造りの建物で砂地の床に、両手足を縛られ猿ぐつわをされて転がされている。

 ゆっくりと頭を巡らす。
 なぜこんな目に。

 でも、日本人でしかも女であれば愚問であることに気づく。
 今回のプロジェクトに反対するものか。
 プロジェクトの競合国か。
 女性が社会で活躍することを良しとしない宗派か。
 考えればいくらでも敵はいそうだ。

 甘かった。

 今までホテルか外出するにも常に王室が用意してくれたSPがいた。
 今まで怖い目に遭ったこともなかった。
 なので勝手に安全と決めてかかった。


 ここは日本ではないのだ。

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