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顧みすれば

第21章 彼女の秘密

なんとか女将の許しをもらい

自宅に戻ると

隣家に人影はなかった。


もう、引っ越していたんだ。


あまりの早さに結城の怒りを感じたよ。


私は女将に引っ越し先を教えてもらい


時々紗英ちゃんたちに会いに行った。
紗英ちゃんは父親の旧姓である
佐々木という名を名乗っていた。

佐々木亜美という新たな名前で人生を歩み始めたんだ。


亜美ちゃんは元気にしていたが


直哉の記憶が抜け落ちていた。



紗英ちゃんのうけた
心の傷の深さを知ったよ。



それからも時々紗英ちゃんたちに会いに行き、紗英ちゃんがちゃんと成長していく姿を見守った」


直哉の父上は

そこまで話し


沈痛の面持ちで唇を噛み締めた。


次の言葉を言い澱んでいるふうだった。

女将の顔を見て何かを確認しているようだった。


女将も少し考えていたが

しばらくして頷いた。


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