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顧みすれば

第29章 失われた時を

「 だからこの話はもうしないで。

 私は百合さんを恨むどころか

 感謝しているの。

 わかってくださるかしら」


百合の手を取って微笑んだ。


「お姉さま…」


百合の目から涙が落ちそうになる


「百合さん大げさよ。

 これからお座敷なのに

 せっかくのお顔が崩れてしまうわ」



「それにね、百合さん」


意味深に微笑む


「百合さん

 板場の尚さんと恋仲なんでしょ」



「お姉さま!知っていらしたの?」



百合が大きく目を見開く


「二人が嬉しそうに見つめあう姿を

 何度も見たわよ。


 尚さんは腕のいい料理人ね。


 二人が一緒になれば

 卯月もますます盛りたつじゃない」


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