顧みすれば
第32章 もう一度
「お前、俺がどれ程その言葉に
苦しめられてきたか分からないだろ」
「苦しめる?」
「お前の中のお兄様の壁が
なかなか越えられないんだよ。
高校時代なんかその言葉と想いに
身動きとれないくらい苦しんだんだぞ」
「直哉さんが荒れてたのって?!」
「ほんと、情けない話だよ。
可愛い妹の紗英が
いつの間にか
恋しい相手になってしまったんだ。
だけど高校生の俺が
小学生の紗英に
恋人になってくれなんて
言えるわけない。
10代なんて精神的にも未熟だから
溜め込んだ思いが違う方向に
流れ出してしまった」