覗いちゃダメっ
第9章 雨の結末
花「とりあえずハンカチで拭いて」
田辺「…ありがとう」
花「…」
これ以上濡れないよう
田辺を木の下にまで移動させた花
ずぶ濡れの彼に小さなハンカチ一枚では
到底足りたかったが
大事な体
冷やさないよう
ハンカチを差し出したのだが…
田辺「…はぁっ」
花「試合、負けたんだってね、先生から
聞いた」
田辺「…うんっ」
花「試合に負けて落ち込む気持ちはわか
るけどまだ次はあるんだし」
田辺「次なんてないよ」
花「そんな事」
田辺「最後の最後、監督が投げさせてく
れたんだ、なのに俺…俺…」
花「…!!」
田辺「相手…相手のバッターにボール…
ボール当てちゃって…冷静にならなきゃ
って思ってるのに指が震えて…」
花「田辺君…」
田辺「もう俺…怖くて…」
花「…」
雨に濡れ冷えたのか
それとも試合の事を思い出してか
彼の体、指はまるで何かに怯えるように
震えていた