しのぶ
第1章 1・光への生還
「殿ではなく……お前なのか」
初め忍びは、仕える主に献上すると言っていたはずだ。だが忍びは、鼻で笑うと志信の耳を柔く食んだ。
「隆景様ならともかく、あの馬鹿殿にお前を扱い切れる訳がない。才能を無駄にするな。俺とお前で組めば、日の本を闇から動かす事も可能だろう」
忍びは一気に奥まで突き込むと、ゆっくりそれを出しながらもう一度問い掛ける。
「さあ、俺にその身を捧げるか?」
「……誓う。誓うから、早くっ」
志信が頷くのを見ると、忍びは志信の腕の拘束をも外し、答えるように深く交じり合う。
「あっ、ああ、ああーっ!」
志信の嬌声が、暗闇に響いては消えていく。快楽の扉を開こうとしていたのは、志信だけではない。志信を犯す忍びの物も、喜びに涙を流し淫靡な音を立てていた。
「あ、もっ……ん、はぁっ……!!」
同時に達した瞬間、忍びの首へ自由になった志信の腕が絡む。離れまいと抱き締めるその細い腕に、忍びは愛おしさを覚えた。
「はあ、はあ……良かったぞ、お前――」
だが、忍びの喜びも満足も、次の瞬間には途絶えてしまった。