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監視 ~愛~

第1章 気になる存在から恋へ

 寮に帰るとき、俺たちは寮までの道筋を2人並んで歩いていた。
 人通りの全くない、その道筋で、葉月は俺にこういった。
「なぁ、神田」
「ああ」
「意外に思うかも知れないけど、田中先生が俺に弱音を吐いたことは一度もないんだ」
 急に核心を突いた葉月に、驚きを隠せない。
「大人の余裕って言うのを見せたかったのかな。別れを言い出したときにも何も言わなかった」
 それは無理していたからだろ。
「無理していたことはわかっていた。でも、それ以上、俺たちはお互いに踏み込まなかったんだ」
 そう言いながら・・・。俺を見て、
「そんな田中先生が神田にだけ、弱い部分を見せているなら、お前に甘えているってことだと思うけどね」
 甘えられている?
「俺が言うことじゃないけど、先生のこと、頼むよ」
 そうなのかな?
 葉月に明快な答えを返せないまま、俺たちはそれぞれの部屋に帰った。

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