病み✕つき
第2章 接近
そこからのことはもうなんだかよく覚えていない。
いつもなら一人で帰る夕方の暗い道なのに
今日は隣に天野くんがいて、
わたしは終始どうしていいかわからなかった。
とにかく緊張が伝わってしまわないように、場を繋ぐように、ただひたすら普通なフリして他愛のない会話をした。
天野くんの家族構成とか、飼ってるペットの話とか、好きな食べ物とか
せっかく聞いた天野くんのいろんなことも、天野くんの表情も、声も、もうなんだか全部夢みたいにぼんやりとわたしの頭の中を通りすぎていくようだった。
「じゃあ俺こっちだから。またな」
「うん、バイバイ☆」
ぐるぐるする頭の中とは裏腹に、笑顔で手を振って別れた。
たった20分足らずの夢みたいな時間
昨日まで届くはずない存在だと思ってたのに、
今日はこんなにいっぱい喋って、わたしの隣で、あんなに近くで声が聞けるなんて
神様、わたし、どうしたらいいのでしょうか。
もうきっと今まで通りではいられない
きっと好きになる。
天野くんのこと、これからもっと…
確信にも近い予感がした。