病み✕つき
第2章 接近
「別に何でもないっ…!」
「あとちょっとだし頑張ろーぜ」
ポンポンっ
そう言って頭を軽く叩かれ、ドキドキともどかしさが込み上げる。
そうじゃないのに…
文化祭委員の仕事が憂鬱で溜息ついてるんじゃないのに
やっぱり天野君はあたしの気持ちなんかちっとも気付いてないよね
ーーーーーー…
『じゃあ各自自分の担当の場所が終わった所から解散していいぞー!』
明日は丸一日文化祭準備のため、今日は早めに解散になった。
あーあ。こんなに早く解散なら天野君と一緒に帰れないじゃん
文化祭委員以外の生徒もまだ残ってるし、きっと天野君はこれからクラスの人と一緒にサッカーしたり一緒に帰ったりするんだろうな…
まだオレンジの空を見上げながら、なんとなく落ち込んでしまう
「江藤、もう帰る?」
「え、うん。あとは明日だし、もう帰ろっかな…」
「あ、まじ?ちょっと待ってて、鞄取ってくるから」
「えっ??」
唐突にそう言って天野君は速い足で走り去ってしまった。
え、鞄取ってくるって、え?…
もしかしてもしかして、それって…
「…お待たせ。じゃー帰るか🎵」
戸惑ってる間に鞄を取って戻ってきた天野君があたしの腕を引いて歩き出した。
「…えっ、えっ?ちょ、天野く…っ」
「…あ、わり。つい(笑)」
ついって…
慌てるあたしに気づいて、天野君は振り返って腕を離した。
「なんか江藤ってうちの妹に似てるんだよな。その辺で転びそうなとことかさ(笑)」
「なにそれ??その辺で転んだりなんかしないもん」
「だよな(笑)」
だいたい天野君の妹って小学生ってこの前言ってたし
天野君ってもしかして天然?
なんだか可笑しくて、でも嬉しくて
自然と笑みが零れてしまう。