病み✕つき
第3章 距離
放課後、言われた通り木工室に向かうと、既に天野君がセッティングを始めていた。
「ごめんっ…!」
「え?俺も今来たとこ」
優しく笑顔を見せる天野君に胸が締め付けられる
「いよいよ明日かー。意外とすぐだったな。もーちょい頑張ろーぜ」
「だね。」
笑ってみせるものの、寂しさが隠せない。
文化祭が終わったら、もうきっとこんな風に天野君と話したりすることなんかない。
今までだってずっとそうだったんだから…
そう言い聞かせるけど、あたしはもう知ってしまった
近くで見る天野君の色んな表情も、優しい声も、
もっともっと知りたい、もっともっと近くにいきたい
もう少しだけ、このまま一緒に…
「天野君…」
「ん?」
「あの…っ明日の…後夜祭…よかったら一緒に…っ」
緊張して言葉がうまく出ない
天野君の顔も見れない…
「ほんとに?」
「え…?」
「なんだ、俺も誘おうと思ってたのに」
そう言って天野君は笑ってくれた。
え、うそ…ほんとに?
「でも昼間の人…一緒に回らなくていいの?」
「あー。いいのいいの。返事しなかったし」
「でもあたしなんかより、あの人の方がいいんじゃないかな…」
こんな事言うつもりじゃないのに、いつもの癖でへらへらっと笑いながら軽く拒否してしまった。
「なんで?そんなの俺が決めるし」
天野君の目は真っ直ぐにあたしを見つめていた。
まるであたしの気持ち、全部見透かされてるみたいに…