病み✕つき
第5章 関係
焦る先輩。先輩のおでこには、またもや赤紫色の大きな痣があった。
「…え…」
「ちょっ、返してよ!」
「…どしたんすか、それ」
聞くと、先輩は言い訳でも考えてるみたいに目を泳がせた。
単純に気になって質問したつもりだったが、その表情を見てなんとなく違和感を感じた。
そんなことが何度かあり、日に日に俺の中で違和感が強くなっていた。
それでも先輩は変わらず明るかった。"こーくん"のノロケ話も相変わらずで
だから敢えて何も聞いたりしなかった。
ーーーある日
先輩は部活に来なかった。
どうやら学校にも来てないらしい
一応LINEを送ってみたが、既読はつかなかった。
〜〜〜♪
部活が終わって帰ろうとしていると、先輩からの着信
「…先輩?」
『……』
先輩は何も言わず、ただ泣いてるみたいだった。
「今どこですか?」
『…公園』
「どこの?」
『…学校の…近く…』
「今行くんで、そこに居てください」
俺は電話を切ってそのまま学校から一番近い公園へ向かった。
「先輩っ!」
「…あまの…」
「どうしたんだよそれ…!」
先輩の手首には真新しい切り傷が綺麗に一筋刻まれていて、真っ赤な血が滲んでいる。
俺はなぜか冷静で、持っていた部活用のタオルで巻き、止血した。
「なんでこんな…」
「そんな焦んなくても大丈夫だよ。これ、自分でやったの。だから全然浅いし…」
先輩は泣き腫らした目で痛々しく笑ってみせた。
「こーくんにね…別れたいって言われちゃったぁ…
他に好きな子がいるんだって。その子と付き合うからって…
あたし、ずっと嫌だって言ってて、その度にこーくんすごい怒って、殴られて…
でもそれ以外はやっぱり優しくて…
あたし別れたくなくて…」
先輩の声が震えてる
「今日ね、やっぱり別れようって、俺もうお前といると暴力しちゃうからって言われて…
それでもいいからって言ったらこーくん、じゃあリスカして見せてって言ってきて…
できたら考えてくれるって言うからあたし…でも怖くて…
こんな切り傷みたいにしか切れなく…て…っ」
先輩は手首に巻いたタオルを握り締めながらぽろぽろと涙を流した
俺は何も言えないまま、先輩を抱きしめることしかできなかった