衝動
第5章 〜それからのお話〜
その関係もずっと続くものではないのだ。
わかってはいたけれど、私は尋也さんと別れるのは嫌だった。
尋也さんのことは大好きだった。
それが恋かどうかはよくわからないけど。
「尋也さん……」
受験にも受かり、高校が決まった私は、親の仕事の関係で引っ越すことになってしまった。
『ん?』
彼はもうすっかり大人になっていた。
彼と別れるのは本当に嫌だった。でも仕方がなかった。
「私…引っ越すことになりました。」
こんなこと言いたくはなかったけれど、言う他なかった。
彼は驚きもせず、ただこちらを見つめていた。
『知ってるよ…』
「え…?」
私はとてもびっくりした。高校が県外だってことも、一度も言ったことはなかった。
『…栞ちゃんのお母さんがね……ずっと前に教えてくれたんだ。』
彼は悲しそうな目をしていた。
「そう…でしたか…」
もう、会えなくなってしまうだろう。
そのことを考えると、泣かずにはいられなかった。
そのとき、彼に抱きしめられた。
「…っ……!?」
『もう絶対会えないなんてことはないよ……絶対会える保証はないけど、絶対会えない保証もないよ…』
彼のその言葉は忘れられなかった。