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最後の恋は甘めの味で

第32章 初めての..... 前編

俺は立ち上がり、傘を受け取る。


「わざわざ、ありがとう。えーと.....」

「立花雫です」


クラスメイトの名前も顔も覚えていない馬鹿な男とでも思われただろうな。


別に悲しくもないけれど。


「ごめんな。本当。いろいろと」

「いえ。大丈夫です。私、影薄いですし。昨日、気にかけてもらっただけでも嬉しいので」


笑う立花さんを見てやっぱり、と思う。


さっきは我慢したのに、今度は口にして出てしまった。


「立花さんは、髪、下ろして眼鏡ない方が絶対可愛いよ」


たちまち立花さんの顔が赤みを帯びる。


そんな反応が新鮮で俺の心に暖かいものが宿った。


とくんと脈打つそれ。


正体は分からなかったけどすごく大事にしたいと思えた。


気持ちの変化に浸っていてこの時の馬鹿な俺は気付かなかったんだ。













後ろにいる女たちの嫉妬の眼差しに











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