テキストサイズ

秘密の時間は私のもの

第8章 藤塚亞

入ったところで行く宛もなく


ふわふらと知りもしない場所を歩けば道に迷うのは当たり前で。



......ここ、どこだよ.....



周りを見渡せば、見知らぬ場所。


目に付くのは階段ぐらいだった。


上ろうか上るまいか.....


記憶にある自分はここまでの道程、ずっと階段を上ってきている。


つまり、次くらいが屋上?


だけど現実ってのは世知辛いもんで。


漫画であれほど屋上で青春をおくっている登場人物達だが


実際、屋上に行ける学校などまず無いに等しい。


つまり、行っても屋上には行けない。


分かっているのに足は屋上(だと思われる)の階段を上り始めた。



どうせやることもないしな

暇潰しだ



1歩、1歩確実に上り、そろそろ踊り場、そんな時。


俺の耳に届いたのは





「ずず.....ひっく.....」





そんなすすり泣き。


瞬時に思い浮かんだのは女で、その次に思い浮かんだのは逃げるという選択肢。


しかし



「ぅっく....」



よく聞くとその声は女にしては低く。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ