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秘密の時間は私のもの

第9章 立川颯太 前編

その口ぶり、どう考えても本来の目的を忘れていた感じだ。


僕が今この問いをしなかったら上野はどうしていたのだろう。


今まで上野という人間を分かった試しはないけれど


今日はより一層分からない。



「これ、届けるように言われたんだよ」



渡されたのはファイルで。


どうやら便りや宿題と思しきプリントが入っているらしい。



「俺、お前の後ろだろ?だから先生に頼まれた」



失礼ながらここで思うのは


あの上野が頼まれて素直に届けるのか、だった。


もろ、僕の上野に対する気持ちが入った上での見解だ。


僕のそんな思いを察したのか上野が口開く。



「お前、俺が頼まれ事の1つや2つ受けない小さい男だとでも思ってんのか?」

「え、いや、えーっと」

「そりゃ最初はんなもんクラス長に頼めって思ったけどよ」



思ったんだぁ......そっかぁ...



「でも、お前に聞きたいことあったの思い出して。意外に俺の家からここ近かったし頼まれたってわけ」


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