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秘密の時間は私のもの

第14章 「久しぶり」

その瞬間、胸になにか切ないものが流れ込む。



「......行くとこ、あんだっけ。止めて、悪かっ」

「う、ううん!急ぎじゃ、無いから!」



そのせいかそんなことを言ってしまう。


ここにいたってどうせ会話なんて発生しないのに。


ほら。上野も驚いた顔してる。


やっぱり、って言って出ていけよ。


そんな忠告を無視して僕の体は上野の隣に再度腰かけた。



「「........」」



あー、もう!ほら!!言わんこっちゃない!!



僕と上野の間に沈黙が流れる。


そりゃそうだ。


本当にあの会話以来の2人きりなんだから。


いや、それどころか学校で会った試しさえない。


それなのに、僕は亞に嘘を吐いてきた。


視線があった、とか、姿を見かけた、とかそんな些細なものだけど。


その度に



『お前なぁ.....視線があったなら挨拶を交わせ。姿を見かけたなら話かけろ』



って言われたけど全て嘘なのだから実践のしようがなかった。

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