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秘密の時間は私のもの

第14章 「久しぶり」

それは言わずもがな上野の手で。


大きくて温かいそれに思わず涙腺が緩みかけ、グッと堪える。



「.....ずっと悔やんでたんだ。あの時のこと」



あの時.....?


始業式の時のことだろうか。


悔やむってなんで上野が?



「あの言葉、俺は直球で受け止めてあんなこと言い放ったけど
実はもっと違う意味、含んでたんじゃないかって....
お前、泣いてたし...
だから、校内でお前見かける度、ちゃんと聞こうと思ったんだけど
あんなん言ったもんだから話しかけれなくて....」



その言葉に堪えていた涙が呆気なく零れそうになり


再度、力を込める。



.......あぁ.....



上野は変わってなんていなかった。


あの頃のまま。優しいままで。


僕は、また、上野に救われたんだ。



“嬉しい”



そんな感情は行動に出、僕は添えられているその手に、頬を無意識に擦り寄せた。


気付いている筈なのに上野は何も言わずにそれを許してくれた。

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