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黒の青空

第5章 3

「ニュースの子どうなったんかな」
「まだ捜索中やろ?」
「うちの学校やろ?」
「3年やから顔見てもわからへん」

「なぁ、西原の情報入った?」
「いや、なんも」

「理緒生きてるよな…」
「そんなん言わんとってよ」
「怖いって」

「西原なんかやらかしたんじゃねーの?」
「男が絡んでるとか噂聞いたで」
「大人しそうやのに?」
「噂やって」


学校に着いて教室に入るまで耳に入ってくる他人の話は理緒のことばかりだった

噂ってなんやねん

どこでそんなん流れるん


「川上ぃー」


友達が話しかけてきた

小中 力


「西原の話いつまで続くんかな」
「…さぁ」
「お前連絡とれるやろ」
「とれるけど…音沙汰ない。力だってとれるやろ?」
「俺も同じだよ」


理緒のケータイは電池を抜いて勉強机の引き出しに仕舞った


「…早く見つかるといいのにな」
「まぁ…どうせいつものことだよ。一時期報道されてみんな心配したり変な噂流したりするけど、日が経ったらありもしなかったようになくなっていくんだよな」


なんの感情もはり付けないで力は言う

力は正直冷たい

でも言ってることは本当なんだよな

俺も共感できる

理緒の話がすっかりなくなったら、ちょっとは自由になれるかな


「今日放課後どっか遊びに行かね?」
「…ごめん、受験近いからパス」


ほんまは理緒を早く自由にさせたいから

あと、今日もしたいから

こっちが本音やな


「そっか、悪りぃ」
「また今度」


今度がいつになるかわからないけど




チャイムの音

あの日から同じ空白の席がある学校での1日

不思議と授業はいつもと変わらない

結局のところ、朝以外はいつもどおり

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