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黒の青空

第7章 5

「寒いー」


脱衣所で縮こまって理緒は言う


「風呂暖房つけたから早く脱いで入るぞ」


俺は上の服を脱ぎながら言った


「ちょ、洋、何で脱いでるん」
「俺もベトついてるもん」
「じゃーうち後にするー」


脱衣所から出て行こうとする理緒

慌てて腕を掴んで引き止めた


「なに⁈」
「一緒に入るの」
「いやや〜恥ずい〜」
「毎回してるやん!」
「いやや〜〜!」
「何がやねん!」


人間同士の引っ張り合いが始まった


「はよ脱いで!」
「そっちがはよ脱げばええやん!」
「脱いでる間に逃げるやろ!」
「なわけない!」
「ある!無理やり脱がすでほんまー!」
「そんなんしたらもうえっちしたげへんもん!」
「…む、無理やりするもん!」
「最低や!」
「お前が言うな!」


にゃー!
にゃー!
カリカリカリカリ


ドアの向こうから鳴き声とカリカリ爪を引っ掻く音

予想外

仲裁するものが現れた


「あ〜も〜やめろようぉあっっ⁈」


突然ふっと引っ張られていた力が消えてバランスを崩した

理緒はドアを開けて猫の相手


「ごめんごめん。うるさかったやんなー」


…なんだよ…


「餌あとでご主人様がくれるってー」








ぎゅ…





「一緒に入ろ…?」


後ろから理緒に抱きついた

猫にやきもち

猫に

でもそんな優しい声を猫に向けるのが嫌だった


「無理やり脱がしたりしないから…一緒に入ろ…?」


背中にぐりぐりと頭を押しつけながら甘えてみた

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