黒の青空
第8章 6
「今日の撮影終わります。日が短くなってきてきついけど最後までお付き合いよろしくお願いします。お疲れ様でしたー!」
部長内谷の一言で全員で挨拶してその日の撮影は終わった
冬の空はもう真っ暗だ
そして刺さるような冷たい風
俺はネッグウォーマーを鼻のあたりまで引っ張った
「さぁ〜みぃ〜」
早く帰ろう
帰って台本読み返さな…
いや、ゲームもしたい…
あ、勉強…
理緒…
「よっ」
ぽんっと後ろから肩を叩かれた
「……え…り、力…?」
「今帰りやろ?一緒に帰ろうや」
「…ええけど…何で放課後やのにおるん」
力は元々部活に入っていない
放課後学校におることなんてない
「図書室。俺もお前と同じ受験生やし」
…の割には俺を遊びに誘っとったよな…
心の中で言って自転車を並べて力と帰路を走った
「さっみっ!」
「嫌や〜〜冬嫌いや〜〜」
「そういや川上、受験いつ?」
なかなか唐突な質問
「…今週の休みの日やわ」
「やばないん⁈」
「何がや」
「え、気持ちとか」
「俺頭はええから」
「腹立つ!てか回答なってないやん」
「頭ええから過去問ちょっと触るだけでいけるもん。緊張とかせーへん」
「余計腹立つな!」
お前が聞いてきたんやん
「お前こそこないだバスケとか言うてたやん。大丈夫か俺が聞きたいわ」
「…………え?」
「…いや、こないだ…」
「あぁ!せやったなぁ!」
……今日の力何かおかしい
「ごめんごめん!考え事してた!俺めっちゃ緊張しいやから」
「今日慌てて勉強?」
結構慌ててやった
力は苦笑いしながら言った
「受験終わったら遊ぼーな」
「遊ぶしか考えてないん」
力はまた苦笑い
受験終わったら断る理由無くなってまうな…
早いものだ
タイムリミットがもう既に動き始めてることを、このとき俺は気づかないでいた